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#freeze
/音素
%indent
/////////////////////////////////
* 起母 [#p1a4c417]
* 起母(きぼ) [#p1a4c417]

''起母''は、起承転結が全て揃う完備音節の開始の基本形である。
起母は調音部位と調音方法の組み合わせにより16音素に分類できる。
調音部位は唇、舌根、舌尖、舌端の4通り、
調音方法は破裂方法として口破、気破、鼻破、無破の4通りと、
その組み合わせで表1のように 4×4=16 通りあるが、
実際の発音では舌端と鼻音の組み合わせが無く、
弱い声門閉鎖音のゼロ起母が例外として加わり、合計16起母となる。
''起母''は、音節の始まり方を表す。計16起母である。

    |*起母表|<  |<    |<    |<    |h
    |*    |*口破|*気破|*鼻破|*無破|t=:
    |*唇  | b   | p   | m   | f   |
    |*舌根| g   | k   | ng  | h   |
    |*舌尖| d   | t   | n   | l   |
    |*舌端| z   | c   | -   | s   |
起母はピンインの声母とほぼ同じである。
主な違いは、ピンインにある舌面音 j、q、x 、巻舌音 zh、ch、sh、r を除外している点である。
これらは次節「承母」で扱う。
#ceq
    |*起母表|<   |<     |<          |<     |h
    |*    |*#C00:|*#00E:|*#090:     |*#000:|-
    |     | 口破 | 気破 | 鼻破      | 無破 |t=:
    |*口唇| b    | p    |      m    | f    |
    |*舌尖| d    | t    |      n    | l    |
    |*舌端| z    | c    |#AAA:(nz)  | s    |
    |*舌根| g    | k    |     (ng)  | h    |
    |*声門| -    |*     |*          |*     |
#ceq(end)

起母は音韻学の声母とほぼ同じであるが、主な違いは舌面音 j、q、x と巻舌音 zh、ch、sh、r の有無である。
猫音韻ではこれらを介母で扱う。
また、声母としての ng は消滅しており通常は声母表に含まれないが、
単独で特殊な音節を作るため、そして規則性を高めるために ng を起母に数える。
起母は、弱い声門閉鎖音という例外的なゼロ起母を除き、
基本的に4種類の調音部位と4種類の調音方法の組み合わせで分類できる。

    |*起母の音価|<|<        |<              |<        |<           |<    |<    |<    |<      |h
    |*  |         |         |l=:            |         |l.:         |     |     |     |       |nw:c
    |*  |*音韻特徴|<        |*音価          |*音声特徴|<           |<    |<    |<    |<      |t=:
    |^  |*調音部位|*調音方法|^              |*調音部位|<           |*破裂|*気音|*鼻音|*その他|
    |*- | 声門    |         |$$ P         $$| 声門    |<           |     |     |     |       |
    |*b | 唇      |#060:口破|$$ b $$/$$ p $$| 下唇    |上唇        | 破裂|     |     |       |
    |*p |^        |#00F:気破|$$\ph        $$|^        |^           |^    | 気音|^    |^      |t.:
    |*m |^        |#C00:鼻破|$$ m         $$|^        |^           |^    |     | 鼻音|^      |t.:
    |*f |^        |#000:無破|$$ f         $$| 下歯    |^           |     |^    |     | 摩擦  |t.:
    |*g | 舌根    |#060:口破|$$ g $$/$$ k $$| 後舌    |軟口蓋      | 破裂|     |     |       |
    |*k |^        |#00F:気破|$$\kh        $$|^        |^           |^    | 気音|^    |^      |t.:
    |*ng|^        |#C00:鼻破|$$ N         $$|^        |^           |^    |     | 鼻音|^      |t.:
    |*h |^        |#000:無破|$$ h         $$|^        |^           |     |^    |     | 摩擦  |t.:
    |*d | 舌尖    |#060:口破|$$ d $$/$$ t $$| 舌尖    |歯茎        | 破裂|     |     |       |
    |*t |^        |#00F:気破|$$\th        $$|^        |^           |^    | 気音|^    |^      |t.:
    |*n |^        |#C00:鼻破|$$ n         $$|^        |^           |^    |     | 鼻音|^      |t.:
    |*l |^        |#000:無破|$$ l         $$| 舌尖側面|^           |     |^    |     | 接近  |t.:
    |*z | 舌端    |#060:口破|$$\z $$/$$\c $$| 舌端    |歯裏&br;歯茎| 破裂|     |     | 摩擦  |
    |*c |^        |#00F:気破|$$\ch        $$|^        |^           |^    | 気音|^    |^      |t.:
    |*s |^        |#000:無破|$$ s         $$|^        |^           |     |     |^    |^      |t.:
''調音部位''は発生の際に狭める口の部位である。
規則性を強めるため、音声学の調音部位よりも粗い区分にしている。
- ''##口唇(こうしん)##'': 口唇を使う音。音声学の分類では両唇音と唇歯音。
- ''##舌根(ぜっこん)##'': 舌根を使う音。音声学の分類では軟口蓋音。
- ''##舌尖(ぜっせん)##'': 舌尖を使う音。音声学の分類では歯茎音の破裂音と鼻音と側面音。
- ''##舌端(ぜったん)##'': 舌端を使う音。音声学の分類では歯茎音の摩擦音と摩擦音。
- ''##声門(せいもん)##'': 声門を使う音。音声学の分類では声門音。

各音素の具体的な発音は表2のようになる。
細かな音声特徴に拘ると幾らでも例外が現れるため、表にある音価は一例に過ぎない。
対して音素は音韻規則を見出すため、必要最低限の特徴に止める必要がある。
''調音方法''は口の狭め方である。
音声学と違って、破裂の仕方のみで分類する。
- ''##口破(こうは)##'': 口腔のみ破裂する破裂音。音声学の分類では無気破裂音と無気破擦音。
- ''##気破(き は)##'': 口破に気音が伴う破裂音。音声学の分類では有気破裂音と有気破擦音。
- ''##鼻破(び は)##'': 口破に鼻音が伴う破裂音。音声学の分類では鼻音。
- ''##無破(む は)##'': 破裂が伴わない非破裂音。音声学の分類では摩擦音と接近音。

''調音部位''は音声学の調音部位よりも粗い区分で、唇、舌根、舌尖、舌端しか区別しない。
音声学のように調音部位を細かく切り分けると f や l のような例外が現れ、規則性が弱まってしまう。
- '' 唇 '': 唇を使う音。両唇音または唇歯音。
- ''舌根'': 舌根を使う音。軟口蓋音。
- ''舌尖'': 舌尖を使う音。音の中線音または側面音。
- ''舌端'': 舌端を使う音。歯裏音が基本だが、承母の影響で大きく変わる。
実際の発音では、舌端鼻音が無く、代わりにゼロ起母が加わって4×4=16起母となる。
- ''舌端鼻破 nz'' は昔、七音の半歯音、三十六字母の日母として存在し、歯茎硬口蓋摩擦鼻音$$ \textctn\!\textctz $$の音価と推定されている((http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E9%9F%B3))。
今は完全に消えている。
- ''舌根鼻破 ng'' も起母としての音価が消滅しており、今や感動詞に特殊な音節 ng(&#21999;)が残るのみである。
このため、ng を除外する場合は15起母になる。

''調音方法''は破裂の仕方だけで区別できる。
音声学には摩擦/接近と有声/無声も重要視するが、
中国語に関しては弁別的意味を持たない上、例外を増やすだけである。
- ''口破'': 口腔内部でのみ破裂を起す破裂音
- ''気破'': 口破に送気を強めた気音が伴う破裂音
- ''鼻破'': 口破に破裂鼻音が伴う破裂音(破裂鼻音)
- ''無破'': 破裂が伴わない音
#ceq
    |*起母の音価表|<|<            |<                      |<        |<     |<    |<    |<    |<    |h
    |*    |         |             |l=:                    |         |l.:   |     |     |     |     |nw:c
    |*起母|*音韻特徴|<            |*音価                  |*音声特徴|<     |<    |<    |<    |<    |t=:
    |^    |*調音    |*調音        |^                      |*調音部位|<     |*破裂|*気音|*鼻音|*狭め|-
    |     |+部位    |+方法        |                       |         |      |     |     |     |     |
    |*b   | ''口唇''|#C00:''口破''|$$ b $$/$$ p         $$| 下唇    |上唇  | 破裂|     |     |     |
    |*p   |^        |#00E:''気破''|$$\ph                $$|^        |^     |^    | 気音|^    |^    |t.:
    |*m   |^        |#090:''鼻破''|$$ m                 $$|^        |^     |^    |     | 鼻音|^    |t.:
    |*f   |^        |#000:''無破''|$$ f                 $$| 下歯    |^     |     |^    |     | 摩擦|t.:
    |*d   | ''舌尖''|#C00:''口破''|$$ d $$/$$ t         $$| 舌尖    |歯茎  | 破裂|     |     |     |
    |*t   |^        |#00E:''気破''|$$\th                $$|^        |^     |^    | 気音|^    |^    |t.:
    |*n   |^        |#090:''鼻破''|$$ n                 $$|^        |^     |^    |     | 鼻音|^    |t.:
    |*l   |^        |#000:''無破''|$$ l                 $$| 舌尖側面|^     |     |^    |     | 接近|t.:
    |*z   | ''舌端''|#C00:''口破''|$$\z $$/$$\c         $$| 舌端    |^     | 破裂|     |     | 摩擦|
    |*c   |^        |#00E:''気破''|$$\ch                $$|^        |^     |^    | 気音|^    |^    |t.:
    |*(zn)|^        |#090:''鼻破''|$$\textctn\!\textctz $$|^        |^     |^    |     | 鼻音|^    |t.:#AAA:
    |*s   |^        |#000:''無破''|$$ s                 $$|^        |^     |     |     |     |^    |t.:
    |*g   | ''舌根''|#C00:''口破''|$$ g $$/$$ k         $$| 後舌    |軟口蓋| 破裂|     |     |     |
    |*k   |^        |#00E:''気破''|$$\kh                $$|^        |^     |^    | 気音|^    |^    |t.:
    |*(ng)|^        |#090:''鼻破''|$$ N                 $$|^        |^     |^    |     | 鼻音|^    |t.:
    |*h   |^        |#000:''無破''|$$ h                 $$|^        |^     |     |^    |     | 摩擦|t.:
    |*-   | ''声門''|#C00:''口破''|$$ P                 $$| 声門    |<     | 破裂|     |     |     |
#ceq(end)

//一応、
//例外となる$$ f $$と$$ l $$はそれぞれ、
//来るべき両唇音$$ F $$と似ているために区別されなくなってから聞こえ度の強い$$ f $$が生き残った、
//そして、歴史的にも現在一部方言区にも$$ n $$との混同が発生しているため
//
//例外となる$$ f $$と$$ l $$は古来から b、p、m と d、t、n とは異なる調音部位の音とされてきたのが事実である。
%bodynote

/////////////////////////////////
* 承母 [#i42e46de]
* 承母(しょうぼ) [#i42e46de]

''承母''は、起母の音韻特徴に対し修正を行い、新しい子音を合成する。
この修正には時間差が無く、起母と承母は同時に調音される。
承母は前舌の位置を指定する''舌母''と、唇の形を指定する''唇母''に分かれる。
無指定の場合はそれぞれ、前舌を硬口蓋から離す低舌と、唇全体を開け閉めする平唇となる。
ゼロ承母を含め、合計6承母となる。
''承母''は、起母の特徴を引き継ぎ、変化を与える方法を表す。計6承母である。

    |*承母表|<  |<    |h
    |*    |*平唇|*円唇|t=:
    |*低舌| -   |  w  |
    |*高舌| j   | jw  |
    |*巻舌| r   | rw  |
承母は音韻学の四呼(開口呼、斉歯呼、合口呼、撮口呼)に巻舌音を2つ加えた、言わば六呼である。
ピンインの介母(i、u、&uuml;)と巻舌接近音(r、ru)を含む。

承母の内、ゼロ承母、y、w、yw はそれぞれ音韻学の四呼である開口呼、斉歯呼、合口呼、撮口呼に対応する。
また、y、w、yw はそれぞれの介母の i、u、&uuml; に対応する。
これらに声母とされてきた巻舌音の r と円唇化した rw が新たに加わる。
#ceq
    |*承母表|<   |<     |h
    |*    |*平唇 |*円唇 |t=:
    |*低舌|##- ##|## w##|
    |*高舌|##y ##|##yw##|
    |*巻舌|##r ##|##rw##|
#ceq(end)

    |*承母の音価|<  |<        |<                   |<        |<      |h
    |     |         |         |l=:                 |         |       |nw:c
    |  *  |*音韻特徴|<        |*発音               |*音声特徴|<      |t=:
    |  ^  |*舌位    |*唇形    |^                   |*舌位    |*唇形  |
    |c:*- |#000:低舌|#000:平唇|                    |         |       |
    |r:* w|^        |#C00:円唇|$$ w   $$           |^        | 円唇化|t.:
    |l:*y |#00F:高舌|#000:平唇|$$ j   $$           | 硬口蓋化|       |
    |l:*yw|^        |#C00:円唇|$$ \jw $$($$ 4 $$)|^        | 円唇化|t.:
    |l:*r |#060:巻舌|#000:平唇|$$ \:R $$           | 巻舌化  |       |
    |l:*rw|^        |#C00:円唇|$$ \rw $$           |^        | 円唇化|t.:
承母は、3種類の''舌母(ぜつぼ)''と2種類の''唇母(しんぼ)''の組み合わせで分類できる。
舌母は前舌の位置である。
- ##''低舌(ていぜつ/ひくじた)''##:前舌を下顎に付ける音。
- ##''高舌(こうぜつ/たかじた)''##:前舌面を硬口蓋に近付ける音。
- ##''巻舌(けんぜつ/まきじた)''##:舌端裏を後部歯茎音に近付ける音。

唇母 ''w'' は円唇化を指定する。円唇化は唇中央付近のみを僅かに開ける形である。
例えば、歯茎破擦音 z($$ \z $$)が円唇化したzw($$ \zw $$)となり、もはや z とは異なる子音になる。
これは中国語の zw($$ \zw $$)と英語の類似音の zoo($$ zu: $$)の比較で分る。
zw は[[SPACE ALC の音声つき中国語音節表>http://www.alc.co.jp/china/study/onsetsu/inbo3.html]] の「su」、
唇母は唇の形である。
- ##''平唇(へいしん)''##:唇の全体を開ける音。
- ##''円唇(えんしん)''##:唇の中央付近のみを開ける音。

#ceq
    |*承母の音価|<        |<            |<                   |<        |<      |h
    |       |             |             |l=:                 |         |       |nw:c
    |  *    |*音韻特徴    |<            |*発音               |*音声特徴|<      |t=:
    |  ^    |*舌位        |*唇形        |^                   |*舌の形  |*唇の形|
    |*##- ##|#000:''低舌''|#000:''平唇''|                    |         |       |
    |*## w##|^            |#C00:''円唇''|$$ w   $$           |^        | 円唇化|t.:
    |*##y ##|#00F:''高舌''|#000:''平唇''|$$ j   $$           | 硬口蓋化|       |
    |*##yw##|^            |#C00:''円唇''|$$ \jw $$($$ 4 $$)|^        | 円唇化|t.:
    |*##r ##|#060:''巻舌''|#000:''平唇''|$$ \:R $$           | 巻舌化  |       |
    |*##rw##|^            |#C00:''円唇''|$$ \rw $$           |^        | 円唇化|t.:
#ceq(end)

''低舌平唇''はゼロ承母である。
低舌は前舌の力を抜いたゼロ舌母、
平唇は唇の力を抜いたゼロ唇母に当たる。
したがって、低舌平唇は起母本来の音である。

''低舌円唇 w'' は円唇化に相当する。円唇化は唇中央付近のみを僅かに開ける形である((いわゆるタコの口になる必要はない。))。
例えば、歯茎破擦音 z($$ \z $$)が円唇化した場合は zw($$ \zw $$)となる。
中国語の zw($$ \zw $$)と英語の類似音の zoo($$ zu: $$)の比較で分るように、z と zw は異なる子音である。
zw は[[大阪大学の音声つき中国語学習音節表>http://el.minoh.osaka-u.ac.jp/flit/public/zh/c_onsetsu10/data/2621.html]] の「zu」、
zoo は[[ weblio 和英辞典の"zoo">http://ejje.weblio.jp/content/zoo]]から確認できる。
中国語では単一の音が続くのに対し、英語では平唇の$$ z $$から円唇の$$ u $$に移り変わるのが聞き取れる。

舌母 ''y'' は硬口蓋化を指定する。舌の位置に注目した場合、高舌化とも言える。
硬口蓋化は前舌を硬口蓋に接近した舌の位置である。
z($$ \z $$)が硬口蓋化する場合、
歯茎硬口蓋破擦音 zy($$ \zj $$)になる。
IPA独自の二重調音記号 $$ \zJ $$ が与えられるほど、z とは異なった音として扱われる。
舌端音 z c s の硬口蓋音 zy cy sy は、ピンインでは j q x が割り当てられ、全く別の声母として扱われる。
''高舌平唇 y'' は硬口蓋化を指定する。舌の位置に注目した場合、高舌化とも言える。日本語の拗音に対応する。
硬口蓋化は前舌を硬口蓋に接近させた副次調音である。
歯茎摩擦音 z($$ \z $$)が硬口蓋化した場合は、歯茎硬口蓋破擦音 zy($$ \zj $$=$$ \zJ $$)になる。
音声学では、専用の二重調音記号を与えるほど z とは異なった音として扱われる。
経緯((歴史的発音の変化。例えば、ピンインの j は zi と gi の両方を兼ねた折衷案である。))
は異なるが、ピンインでも j が割り当てられ、z とは全く別の声母として扱われる。

舌母 ''r'' は巻舌化を指定する。巻舌化は舌を巻き上げ、舌端裏を後部歯茎に接近した舌の位置である。
z($$ \z $$)を巻舌化すると zr($$ \zr $$)となる。
巻舌音は古来からある四呼に含まれない理由で、介母に分類されないが、
舌の形に対する修正という y と類似した機能的分類により承母として一括りにした。
''巻舌平唇 r'' は巻舌化を指定する。
例えば、z($$ \z $$)を巻舌化すると zr($$ \zr $$=$$ \zR $$)となる。
音声学では、調音部位が異なるとして専用記号が与えられている。
ピンインでは、zh が割り当てられ、z とは全く別の声母として扱われる。
しかし、y と w と同じく接近音であること、y と排他的であること、単独で音節を作ることから一括りにした
((音節構造から承母独特の解釈までを承母理論として纏める予定。))。

この他、''yw'' と''rw'' はそれぞれ硬口蓋化と円唇化、巻舌化と円唇化の同時指定である。
この他、''高舌円唇 yw'' と''巻舌円唇 rw'' はそれぞれ硬口蓋化と円唇化、巻舌化と円唇化の同時指定である。
z($$ \z $$)に対応する音は、
それぞれ zyw($$ \zjw$$)と zrw($$ \zrw $$)になる。
特に、zyw は歯茎、硬口蓋、唇の3ヵ所で同時に調音されることになる。
それぞれ zyw($$ \zjw $$=$$ \z\^4 $$)と zrw($$ \zrw $$=$$ \zRw $$)になる。


%bodynote

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* 転母 [#l7ca322b]
* 転母(てんぼ) [#l7ca322b]

転母は、口を開くときの開き具合を指定する。
起母と承母では口は閉じているのに対し、転母では円唇以外の効果を全て打ち消して口を開ける。
転母を指定し場合は、不動を意味し、顎と舌は起母と介母を発音した位置から動かない。
ゼロ転母も含め、合計3転母しかない。
''転母''は狭めてた口を一転して開ける方法を表す。ゼロ転母の''不転(ふてん)''、''小転(しょうてん)''、''大転(だいてん)''の計3転母である。

転母は音韻学の韻腹に対応する。
また、e、a はの順に等韻図の内転と外転とも対応する
((同じ「転」と呼んでいるのは偶然かもしれない。))。
((同じ「転」と呼んでいるのは偶然かどうかは調べてない。))。

    |*転母の音価|<|<                                                   |<                           |h
    |   |         |l=:                                                 |                            |nw:c
    |* |*音韻特徴|*音価                                               |*音声特徴                   |
    |*- |*不転    |$$ i $$、$$ y $$、$$ u $$、$$\zz$$、$$\rr$$、$$ V $$|l:起母と介母の音を保つ      |
    |*e |*小転    |$$ e $$、$$\oe$$、$$ o $$、$$ @ $$、$$ 7 $$、$$ E $$|l:顎を小さく開ける          |t.:
    |*a |*大転    |$$ E $$、$$ a $$、$$ A $$                           |l:顎を大きく開ける          |
#ceq
#column
    |*転母表|< |h
    |*不転  | -|t=:
    |*小転  | e|
    |*大転  | a|
#column
    |*転母の音価|<|<                                                     |<                     |h
    |   |         |l=:                                                   |                      |nw:c
    |*  |*音韻特徴|*音価                                                 |*音声特徴             |t=:
    |*- | 不転    |$$ j $$、$$ 4 $$、$$ w $$、$$ \*r $$、$$\:R$$、$$ V $$|l:起母と介母の音を保つ|
    |*e | 小転    |$$ e $$、$$\oe$$、$$ o $$、$$ @ $$、$$ 7 $$、$$ E $$  |l:顎を小さく開ける    |t.:
    |*a | 大転    |$$ E $$、$$ a $$、$$ A $$                             |l:顎を大きく開ける    |
#column
#ceq(end)

零転母の''不転''は起母と承母のまま音を伸ばす。
''小転''の ''e'' は顎を僅かに開ける。ただし、低舌の場合は顎を閉じたままでも許容される。
''大転''の ''a'' は ''e'' と弁別できる程度に顎を開ける。
何れも転母も前後の承母と結母の影響を受けて変わるため、多くの音価を持つ。
''不転''は、ゼロ転母である。口を開けず、起母と承母をそのまま伸ばした音を表す。
伸ばす過程では、力を少し緩めるため、音価は前の起母や転母に対応した接近音となる。
ただ、中国語では摩擦音と接近音の対立が無いため、摩擦音で発音される場合もある。

''小転 e'' は大転と弁別できる程度に顎を小さく開ける音である。
低舌の場合は顎を閉じたままでも許容される。
また、前後の音に応じて不転と区別しない場合もある。

''大転 a'' は小転と弁別できる程度に顎を大きく開ける音である。
顎の開き具合は絶対なものではなく、個人差・地域差が大きい。
飽くまでも弁別できる程度の相対的なものである。

転母は前後の音素に影響される性質上、多くの音価を持つ。
その上、音節によっては小転の$$ 7 $$が落ちて不転になったり、同じ音価$$ E $$が小転と大転の両方に現れたりと、分類が難しい。
このため、転母の分類に関しては専門家の間でも統一しないのが現状である。
音節構造と合わせて様々な分類法が提案されているが、凌宮音韻は規則性を強めた分類法に属する
((音節構造から転母独特の解釈まで転母理論として纏める予定。))。

%bodynote

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* 結母 [#sacde245]
* 結母(けつぼ) [#sacde245]

結母は、音節の終了方法を指定する。
結母は単独では音節を作らず、結母に入るときに弱い音の移り変わりが発生する。
i、u、n、ng は音韻学の韻尾に対応するが、将来的に er 音化を指定する結母を追加する予定。
結母は、音節の終わり方を表す。6結母である。

    |*結母表|<    |<    |h
    |       |*前方|*後方|t=:
    |*口音  | i   |  u  |
    |*鼻音  | n   |  ng |
歴史的音韻変化で消えた両唇鼻音の m や破裂音 p、d、k も存在していれば結母に入る。
また、児音化も5結母と組み合わせた音として結母に分類されることになる。
しかし、児音化の規則は複雑で、新しく、現在も進化途中であるため、理論が纏まるまで結母に加えないことにした。

//  |*結母表|<    |<    |<    |h
//  |*      |<    |*前方|*後方|t=:
//  |*平舌  |*口音| i   |  u  |
//  |^      |*鼻音| n   |  ng |
//  |*巻舌  |*口音| r   |  ur |
//  |^      |*鼻音|^    |  ngr|
一方で、児音と関係なく、ピンインでは「er」と表記される特殊な巻舌母音が存在する。
将来結母に分類予定の児音化で「i」や「n」と排他的であることから、暫定で前方の鼻音として分類する。

    |*結母の音価|<|<    |<      |<        |<                |l:h
    |   |         |     |l=:    |         |                 |nw:c
    |*  |*音韻特徴|<    |*音価  |*音声特徴|<                |t=:
    |^  |*鼻音    |*前後|^      |*鼻腔開放|*閉鎖            |
    |*i | 口音    | 前方|$$ I $$|         | 硬口蓋接近      |
    |*u |^        | 後方|$$ U $$|^        | 軟口蓋接近+円唇|t.:
    |*n | 鼻音    | 前方|$$ n $$| 鼻腔開放| 歯茎閉鎖        |
    |*ng|^        | 後方|$$ N $$|^        | 軟口蓋閉鎖      |t.:
また、「u」は唇を使うために「前方」よりも前方ではあるが、二重調音で、同時に後舌と軟口蓋でも接近する準後舌母音である。
既に消滅した「m」と「p」は「u」と共に唇を使う結母であったら、今は「u」しか残ってないため、唇の行は省略する。

//結母は単独では音節を作らず、結母に入るときに弱い音の移り変わりが発生する。
//結母には平舌(へいぜつ)、巻舌(けんぜつ)に分かれる。
//平舌には i、n、u、ng にゼロ舌母を加えた5種類ある。
//巻舌には r、ir、ur、ngr の4種類ある。


#ceq
#column
    |*結母表|<    |<    |<    |h
    |*      |*口音|*鼻音|*児音|t=:
    |*開放  | -   |     |     |
    |*前方  | i   | n   | r   |
    |*後方  | u   | ng  |     |
#column
    |*結母の音価|<|< |<      |<        |<                   |h
    |    |     |     |l=:    |         |                    |nw:c
    |*   |*音韻特徴|<|*音価  |*音声特徴|<                   |t=:
    |^   |*前後|*鼻音|^      |*鼻腔開放|*閉鎖               |
    |*-  | 開放| 口音|       |転母までの音を維持|<          |
    |*i  | 前方| 口音|$$ I $$|         | 硬口蓋接近         |
    |*n  | ^   | 鼻音|$$ n $$| 鼻腔開放| 歯茎閉鎖           |t.:
    |*r  | ^   | 児音|$$\:R$$|         | 硬口蓋接近・巻舌   |t.:
    |*u  | 後方| 口音|$$ U $$|         | 軟口蓋接近と円唇化 |
    |*ng | ^   | 鼻音|$$ N $$| 鼻腔開放| 軟口蓋閉鎖         |t.:
#column
#ceq(end)




//#ceq
//#column
//    |*結母表|<    |<    |<    |h
//    |*      |<    |*平舌|*巻舌|t=:
//    |*開放  |<    | -   | r   |
//    |*前方  |*口音| i   | ir  |
//    |^      |*鼻音| n   |tx:  |
//    |*後方  |*口音| u   | ur  |
//    |^      |*鼻音| ng  | ngr |
//#column
//    |*結母の音価|< |<    |<    |<      |<        |<                   |h
//    |    |         |     |<    |l=:    |         |                    |nw:c
//    |*   |*音韻特徴|<    |<    |*音価  |*音声特徴|<                   |t=:
//    |^   |*舌位    |*鼻音|*前後|^      |*鼻腔開放|*閉鎖               |
//    |*-  | 平舌    | 口音| 開放|       |>|転母までの音を維持          |
//    |*i  |^        | 口音| 前方|$$ I $$|         | 硬口蓋接近         |
//    |*n  |^        | 鼻音| 前方|$$ n $$| 鼻腔開放| 歯茎閉鎖           |t.:
//    |*u  |^        | 口音| 後方|$$ U $$|         | 軟口蓋接近と円唇化 |
//    |*ng |^        | 鼻音| 後方|$$ N $$| 鼻腔開放| 軟口蓋閉鎖         |t.:
//    |*r  | 巻舌    | 口音| 開放|(巻舌は纏まり次第、追加する予定)|<|<|
//    |*ir |^        | 口音| 前方|^                                 |<|<|t.:
//    |*ur |^        | 口音| 後方|^                                 |<|<|t.:
//    |*ngr|^        | 鼻音|^    |^                                 |<|<|
//#column
//#ceq(end)



/////////////////////////////////
* 声調 [#i5220620]

声調は、音の高さを指定する。
声調は、音の高さを表す。5声調である。

一番低い音を1、一番高い音を5とする5度式で説明される場合が多く、
その場合の調値は 55、35、214、51 で表現される。
ただし、軽声は直前の声調に応じて変化する。
また、絶対の高さは地域差、個人差が大きいが、
絶対の高さは地域差、個人差が大きいが、
意味の弁別に用いられる声調が5つあることが変わらない。

    |*声調の音価|<|<      |<             |<        |l:h
    |  |l.:  |            |l=:           |         |nw:c
    |* |<    |*音韻特徴   |*発音         |*音声特徴|t=:
    |*1|*陰平|高→高、高い|$$\tone{555}$$|5-5      |
    |*2|*陽平|低→高、上り|$$\tone{345}$$|3-5      |t.:
    |*3|*上声|低→低、低い|$$\tone{214}$$|214      |t.:
    |*4|*去声|高→低、下り|$$\tone{531}$$|5-1      |t.:
    |*5|*軽声|短調        |              |         |
軽声は固有の調値ではなく、直前の声調に応じて変化する。
また、文脈アクセントを兼ねているため、規則が複雑である。
軽声に関しては、別に纏める予定。

    |*声調の音価|<|<      |<                    |<             |l:h
    |  |l.:  |            |l=:                  |              |nw:c
    |* |<    |*音韻特徴   |*発音                |*音声特徴     |t=:
    |*1|*陰平|高→高、高い|$$\tone{555}$$       |5-5           |
    |*2|*陽平|低→高、上り|$$\tone{345}$$       |3-5           |t.:
    |*3|*上声|低→低、低い|$$\tone{214}$$       |214           |t.:
    |*4|*去声|高→低、下り|$$\tone{531}$$       |5-1           |t.:
    |*5|*軽声|短調        |(軽声は纏まり次第、追加する予定)|<|

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* まとめ・つなぎ [#qefe8bea]

[[音節表>../音節表]]

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