中国音韻/音素 のバックアップ(No.3) |
起母起母は、起承転結が全て揃う完備音節における出だしの基本形である。閉鎖の位置である調音点や、破裂、気音、鼻音の有無などを規定する。起母の無い音節も、弱い声門閉鎖音をゼロ起母と見なすことが可能である。ゼロ起母も含る場合、合計16起母となる。 起母は声母と大体同じであるが、舌面音 j、q、x と巻舌音 zh、ch、sh、r は除いている。また、舌根鼻音 ng は単独で例外的な音節を成し、唇音や舌根音との対応関係から加えてる。
承母承母は、起母の音韻特徴に対し修正を行い、新しい子音を合成する。この修正には時間差が無く、起母と承母は同時に調音される。承母は前舌の位置を指定する舌母と、唇の形を指定する唇母に分かれる。無指定の場合はそれぞれ、前舌を硬口蓋から離す低舌と、唇全体を開け閉めする平唇となる。ゼロ承母を含め、合計6承母となる。 承母の内、ゼロ承母、y、w、yw の 順に四呼の開口呼、斉歯呼、合口呼、撮口呼に対応する。また、y、w、yw はピンインの介母音 i、u、ü に対応する。これらに巻き舌の r と円唇化した rw が新たに加わる。
唇母 w は円唇化を指定する。円唇化は唇中央付近のみを僅かに開ける形である。例えば、歯茎破擦音 z()が円唇化したzw()となり、もはや z とは異なる子音になる。これは中国語の zw(租、)と英語の類似音の zoo()の比較で分る。zw はSPACE ALC の音声つき中国語音節表 の「su」、zoo は weblio 和英辞典の"zoo"から確認できる。中国語では単一の音が続くのに対し、英語では平唇のから円唇のに移り変わるのが聞き取れる。 舌母 y は硬口蓋化を指定する。舌の位置に注目した場合、高舌化とも言える。硬口蓋化は前舌を硬口蓋に接近した舌の位置である。z()が硬口蓋化する場合、歯茎硬口蓋破擦音 zy()になる。IPA独自の二重調音記号 が与えられるほど、z とは異なった音として扱われる。舌端音 z c s の硬口蓋音 zy cy sy は、ピンインでは j q x が割り当てられ、全く別の声母として扱われる。 舌母 r は巻舌化を指定する。巻舌化は舌を巻き上げ、舌端裏を後部歯茎に接近した舌の位置である。z()を巻舌化すると zr(/)となる。巻舌音は古来からある四呼に含まれない理由で、介母に分類されないが、舌の形に対する修正という y と類似した機能的分類により承母として一括りにした。 この他、yw とrw はそれぞれ硬口蓋化と円唇化、巻舌化と円唇化の同時指定である。z()に対応する音は、それぞれ zyw(/)と zrw()になる。特に、zyw は唇、歯茎、硬口蓋の3ヵ所で同時に調音されることになる。 転母転母は、口を開くときの開き具合を指定する。起母と承母では口は閉じているのに対し、転母では円唇以外の効果を全て打ち消して口を開ける。転母を指定し場合は、不動を意味し、顎と舌は起母と介母を発音した位置から動かない。ゼロ転母も含め、合計3転母しかない。 転母は音韻学の韻腹に対応する。また、e、a はの順に等韻図の内転と外転とも対応する*1。
e は a に対して顎を殆ど開かない特徴を持つが、顎を完全に閉じる人もいる。対しても a もまた理想的には大きく開けるが、実際は個人差が大きく e と弁別できる程度で良い。また、両方とも舌の位置は前後の承母と結母に同化して大きく変わる。このため、韻腹の分類は学者によっても分かれる。 結母結母は、音節の終了方法を指定する。結母は単独では音節を作らず、結母に入るときに弱い音の移り変わりが発生する。i、u、n、ng は音韻学の韻尾に対応するが、将来的に er 音化を指定する結母を追加する予定。
声調声調は、音の高さを指定する。一番低い音を1、一番高い音を5とする5度式で説明される場合が多く、その場合の調値は 55、35、214、531 で表現される。ただし、軽声は直前の声調に応じて変化する。 また、絶対の高さは地域差、個人差が大きいが、意味の弁別に用いられる声調が5つあることが変わらない。
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