起母

起母(きぼ)

起母は、起承転結が全て揃う完備音節の開始の基本形である。起母は調音部位と調音方法の組み合わせにより16音素に分類できる。調音部位は唇、舌根、舌尖、舌端の4通り、調音方法は破裂方法として口破、気破、鼻破、無破の4通りと、その組み合わせで表1のように 4×4=16 通りあるが、実際の発音では舌端と鼻音の組み合わせが無く、弱い声門閉鎖音のゼロ起母が例外として加わり、合計16起母となる。起母は、音節の始まり方を表す。計16起母である。

|*起母表|< |< |< |< |h |* |*口破|*気破|*鼻破|*無破|t=: |*唇 | b | p | m | f | |*舌根| g | k | ng | h | |*舌尖| d | t | n | l | |*舌端| z | c | - | s |

起母はピンインの声母とほぼ同じである。主な違いは、ピンインにある舌面音 j、q、x 、巻舌音 zh、ch、sh、r を除外している点である。これらは次節「承母」で扱う。
|*起母表|< |< |< |< |h |* |*#C00:|*#00E:|*#090: |*#000:|- | | 口破 | 気破 | 鼻破 | 無破 |t=: |*口唇| b | p | m | f | |*舌尖| d | t | n | l | |*舌端| z | c |#AAA:(nz) | s | |*舌根| g | k | (ng) | h | |*声門| - |* |* |* |
起母はピンインの声母とほぼ同じであるが、主な違いは舌面音 j、q、x と巻舌音 zh、ch、sh、r の有無である。凌宮音韻ではこれらを介母で扱う。また、声母としての ng は消滅しており通常は声母表に含まれないが、単独で特殊な音節を作るため、そして規則性を高めるために ng を起母に数える。起母は、弱い声門閉鎖音という例外的なゼロ起母を除き、基本的に4種類の調音部位と4種類の調音方法の組み合わせで分類できる。

|*起母の音価|<|< |< |< |< |< |< |< |< |h |* | | |l=: | |l.: | | | | |nw:c |* |*音韻特徴|< |*音価 |*音声特徴|< |< |< |< |< |t=: |^ |*調音部位|*調音方法|^ |*調音部位|< |*破裂|*気音|*鼻音|*その他| |*- | 声門 | |$$P$$| 声門 |< | | | | | |*b | 唇 |#060:口破|$$b$$/$$p$$| 下唇 |上唇 | 破裂| | | | |*p |^ |#00F:気破|$$\ph$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*m |^ |#C00:鼻破|$$m$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.: |*f |^ |#000:無破|$$f$$| 下歯 |^ | |^ | | 摩擦 |t.: |*g | 舌根 |#060:口破|$$g$$/$$k$$| 後舌 |軟口蓋 | 破裂| | | | |*k |^ |#00F:気破|$$\kh$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*ng|^ |#C00:鼻破|$$N$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.: |*h |^ |#000:無破|$$h$$|^ |^ | |^ | | 摩擦 |t.: |*d | 舌尖 |#060:口破|$$d$$/$$t$$| 舌尖 |歯茎 | 破裂| | | | |*t |^ |#00F:気破|$$\th$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*n |^ |#C00:鼻破|$$n$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.: |*l |^ |#000:無破|$$l$$| 舌尖側面|^ | |^ | | 接近 |t.: |*z | 舌端 |#060:口破|$$\z$$/$$\c$$| 舌端 |歯裏
歯茎| 破裂| | | 摩擦 |
|*c |^ |#00F:気破|$$\ch$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*s |^ |#000:無破|$$s$$|^ |^ | | |^ |^ |t.:

調音部位は発生の際に狭める口の部位である。規則性を強めるため、音声学の調音部位よりも粗い区分にしている。
  • 口唇(こうしん): 口唇を使う音。音声学の分類では両唇音と唇歯音。
  • 舌根(ぜっこん): 舌根を使う音。音声学の分類では軟口蓋音。
  • 舌尖(ぜっせん): 舌尖を使う音。音声学の分類では歯茎音の破裂音と鼻音と側面音。
  • 舌端(ぜったん): 舌端を使う音。音声学の分類では歯茎音の摩擦音と摩擦音。
  • 声門(せいもん): 声門を使う音。音声学の分類では声門音。
各音素の具体的な発音は表2のようになる。細かな音声特徴に拘ると幾らでも例外が現れるため、表にある音価は一例に過ぎない。対して音素は音韻規則を見出すため、必要最低限の特徴に止める必要がある。調音方法は口の狭め方である。音声学と違って、破裂の仕方のみで分類する。
  • 口破(こうは): 口腔のみ破裂する破裂音。音声学の分類では無気破裂音と無気破擦音。
  • 気破(き は): 口破に気音が伴う破裂音。音声学の分類では有気破裂音と有気破擦音。
  • 鼻破(び は): 口破に鼻音が伴う破裂音。音声学の分類では鼻音。
  • 無破(む は): 破裂が伴わない非破裂音。音声学の分類では摩擦音と接近音。
調音部位は音声学の調音部位よりも粗い区分で、唇、舌根、舌尖、舌端しか区別しない。音声学のように調音部位を細かく切り分けると f や l のような例外が現れ、規則性が弱まってしまう。
  • : 唇を使う音。両唇音または唇歯音。
  • 舌根: 舌根を使う音。軟口蓋音。
  • 舌尖: 舌尖を使う音。音の中線音または側面音。
  • 舌端: 舌端を使う音。歯裏音が基本だが、承母の影響で大きく変わる。実際の発音では、舌端鼻音が無く、代わりにゼロ起母が加わって4×4=16起母となる。
  • 舌端鼻破 nz は昔、七音の半歯音、三十六字母の日母として存在し、歯茎硬口蓋摩擦鼻音$$\textctn\!\textctz$$の音価と推定されている*1今は完全に消えている。
  • 舌根鼻破 ng も起母としての音価が消滅しており、今や感動詞に特殊な音節 ng(嗯)が残るのみである。このため、ng を除外する場合は15起母になる。
調音方法は破裂の仕方だけで区別できる。音声学には摩擦/接近と有声/無声も重要視するが、中国語に関しては弁別的意味を持たない上、例外を増やすだけである。
  • 口破: 口腔内部でのみ破裂を起す破裂音
  • 気破: 口破に送気を強めた気音が伴う破裂音
  • 鼻破: 口破に破裂鼻音が伴う破裂音(破裂鼻音)
  • 無破: 破裂が伴わない音
    |*起母の音価表|<|< |< |< |< |< |< |< |< |h |* | | |l=: | |l.: | | | | |nw:c |*起母|*音韻特徴|< |*音価 |*音声特徴|< |< |< |< |< |t=: |^ |*調音 |*調音 |^ |*調音部位|< |*破裂|*気音|*鼻音|*狭め|- | |+部位 |+方法 | | | | | | | | |*b | 口唇|#C00:口破|$$b$$/$$p$$| 下唇 |上唇 | 破裂| | | | |*p |^ |#00E:気破|$$\ph$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*m |^ |#090:鼻破|$$m$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.: |*f |^ |#000:無破|$$f$$| 下歯 |^ | |^ | | 摩擦|t.: |*d | 舌尖|#C00:口破|$$d$$/$$t$$| 舌尖 |歯茎 | 破裂| | | | |*t |^ |#00E:気破|$$\th$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*n |^ |#090:鼻破|$$n$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.: |*l |^ |#000:無破|$$l$$| 舌尖側面|^ | |^ | | 接近|t.: |*z | 舌端|#C00:口破|$$\z$$/$$\c$$| 舌端 |^ | 破裂| | | 摩擦| |*c |^ |#00E:気破|$$\ch$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*(zn)|^ |#090:鼻破|$$\textctn\!\textctz$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.:#AAA: |*s |^ |#000:無破|$$s$$|^ |^ | | | |^ |t.: |*g | 舌根|#C00:口破|$$g$$/$$k$$| 後舌 |軟口蓋| 破裂| | | | |*k |^ |#00E:気破|$$\kh$$|^ |^ |^ | 気音|^ |^ |t.: |*(ng)|^ |#090:鼻破|$$N$$|^ |^ |^ | | 鼻音|^ |t.: |*h |^ |#000:無破|$$h$$|^ |^ | |^ | | 摩擦|t.: |*- | 声門|#C00:口破|$$P$$| 声門 |< | 破裂| | | |

承母

承母(しょうぼ)

承母は、起母の音韻特徴に対し修正を行い、新しい子音を合成する。この修正には時間差が無く、起母と承母は同時に調音される。承母は前舌の位置を指定する舌母と、唇の形を指定する唇母に分かれる。無指定の場合はそれぞれ、前舌を硬口蓋から離す低舌と、唇全体を開け閉めする平唇となる。ゼロ承母を含め、合計6承母となる。承母は、起母の特徴を引き継ぎ、変化を与える方法を表す。計6承母である。

|*承母表|< |< |h |* |*平唇|*円唇|t=: |*低舌| - | w | |*高舌| j | jw | |*巻舌| r | rw |

承母は音韻学の四呼(開口呼、斉歯呼、合口呼、撮口呼)に巻舌音を2つ加えた、言わば六呼である。ピンインの介母(i、u、ü)と巻舌接近音(r、ru)を含む。
承母の内、ゼロ承母、y、w、yw はそれぞれ音韻学の四呼である開口呼、斉歯呼、合口呼、撮口呼に対応する。また、y、w、yw はそれぞれの介母の i、u、ü に対応する。これらに声母とされてきた巻舌音の r と円唇化した rw が新たに加わる。
|*承母表|< |< |h |* |*平唇 |*円唇 |t=: |*低舌|- | w| |*高舌|y |yw| |*巻舌|r |rw|

|*承母の音価|< |< |< |< |< |h | | | |l=: | | |nw:c | * |*音韻特徴|< |*発音 |*音声特徴|< |t=: | ^ |*舌位 |*唇形 |^ |*舌位 |*唇形 | |c:*- |#000:低舌|#000:平唇| | | | |r:* w|^ |#C00:円唇|$$w$$ |^ | 円唇化|t.: |l:*y |#00F:高舌|#000:平唇|$$j$$ | 硬口蓋化| | |l:*yw|^ |#C00:円唇|$$\jw$$$$4$$)|^ | 円唇化|t.: |l:*r |#060:巻舌|#000:平唇|$$\:R$$ | 巻舌化 | | |l:*rw|^ |#C00:円唇|$$\rw$$ |^ | 円唇化|t.:

承母は、3種類の舌母(ぜつぼ)と2種類の唇母(しんぼ)の組み合わせで分類できる。舌母は前舌の位置である。
  • 低舌(ていぜつ/ひくじた):前舌を下顎に付ける音。
  • 高舌(こうぜつ/たかじた):前舌面を硬口蓋に近付ける音。
  • 巻舌(けんぜつ/まきじた):舌端裏を後部歯茎音に近付ける音。
唇母 w は円唇化を指定する。円唇化は唇中央付近のみを僅かに開ける形である。例えば、歯茎破擦音 z($$\z$$)が円唇化したzw($$\zw$$)となり、もはや z とは異なる子音になる。これは中国語の zw($$\zw$$)と英語の類似音の zoo($$zu:$$)の比較で分る。zw はSPACE ALC の音声つき中国語音節表 の「su」、唇母は唇の形である。
  • 平唇(へいしん):唇の全体を開ける音。
  • 円唇(えんしん):唇の中央付近のみを開ける音。
|*承母の音価|< |< |< |< |< |h | | | |l=: | | |nw:c | * |*音韻特徴 |< |*発音 |*音声特徴|< |t=: | ^ |*舌位 |*唇形 |^ |*舌の形 |*唇の形| |*- |#000:低舌|#000:平唇| | | | |* w|^ |#C00:円唇|$$w$$ |^ | 円唇化|t.: |*y |#00F:高舌|#000:平唇|$$j$$ | 硬口蓋化| | |*yw|^ |#C00:円唇|$$\jw$$$$4$$)|^ | 円唇化|t.: |*r |#060:巻舌|#000:平唇|$$\:R$$ | 巻舌化 | | |*rw|^ |#C00:円唇|$$\rw$$ |^ | 円唇化|t.:
低舌平唇はゼロ承母である。低舌は前舌の力を抜いたゼロ舌母、平唇は唇の力を抜いたゼロ唇母に当たる。したがって、低舌平唇は起母本来の音である。
低舌円唇 w は円唇化に相当する。円唇化は唇中央付近のみを僅かに開ける形である*2例えば、歯茎破擦音 z($$\z$$)が円唇化した場合は zw($$\zw$$)となる。中国語の zw($$\zw$$)と英語の類似音の zoo($$zu:$$)の比較で分るように、z と zw は異なる子音である。zw は大阪大学の音声つき中国語学習音節表 の「zu」、zoo は weblio 和英辞典の"zoo"から確認できる。中国語では単一の音が続くのに対し、英語では平唇の$$z$$から円唇の$$u$$に移り変わるのが聞き取れる。
舌母 y は硬口蓋化を指定する。舌の位置に注目した場合、高舌化とも言える。硬口蓋化は前舌を硬口蓋に接近した舌の位置である。z($$\z$$)が硬口蓋化する場合、歯茎硬口蓋破擦音 zy($$\zj$$)になる。IPA独自の二重調音記号 $$\zJ$$ が与えられるほど、z とは異なった音として扱われる。舌端音 z c s の硬口蓋音 zy cy sy は、ピンインでは j q x が割り当てられ、全く別の声母として扱われる。高舌平唇 y は硬口蓋化を指定する。舌の位置に注目した場合、高舌化とも言える。日本語の拗音に対応する。硬口蓋化は前舌を硬口蓋に接近させた副次調音である。歯茎摩擦音 z($$\z$$)が硬口蓋化した場合は、歯茎硬口蓋破擦音 zy($$\zj$$$$\zJ$$)になる。音声学では、専用の二重調音記号を与えるほど z とは異なった音として扱われる。経緯*3は異なるが、ピンインでも j が割り当てられ、z とは全く別の声母として扱われる。
舌母 r は巻舌化を指定する。巻舌化は舌を巻き上げ、舌端裏を後部歯茎に接近した舌の位置である。z($$\z$$)を巻舌化すると zr($$\zr$$)となる。巻舌音は古来からある四呼に含まれない理由で、介母に分類されないが、舌の形に対する修正という意味において y と類似した機能的分類と考えるべきである。このため、凌宮音韻は巻舌化を承母の一種として分類する。巻舌平唇 r は巻舌化を指定する。例えば、z($$\z$$)を巻舌化すると zr($$\zr$$$$\zR$$)となる。音声学では、調音部位が異なるとして専用記号が与えられている。ピンインでは、zh が割り当てられ、z とは全く別の声母として扱われる。しかし、y と w と同じく接近音であること、y と排他的であること、単独で音節を作ることから一括りにした*4
この他、ywrw はそれぞれ硬口蓋化と円唇化、巻舌化と円唇化の同時指定である。この他、高舌円唇 yw巻舌円唇 rw はそれぞれ硬口蓋化と円唇化、巻舌化と円唇化の同時指定である。z($$\z$$)に対応する音は、それぞれ zyw($$\zjw$$)と zrw($$\zrw$$)になる。特に、zyw は歯茎、硬口蓋、唇の3ヵ所で同時に調音されることになる。それぞれ zyw($$\zjw$$$$\z\^4$$)と zrw($$\zrw$$$$\zRw$$)になる。
また、起母に対する承母の影響は、舌端が他に比べ大きく出ているのが事実。これがピンインでは舌端音だけが異なる声母を当てていると考えて良い。この声母の変音規則も含め、音節構造から承母独特の解釈までを承母理論として纏める予定。
*2 いわゆるタコの口になる必要はない。
*3 歴史的発音の変化。例えば、ピンインの j は zi と gi の両方を兼ねた折衷案である。
*4 音節構造から承母独特の解釈までを承母理論として纏める予定。

転母

転母(てんぼ)

転母は、口を開くときの開き具合を指定する。起母と承母では口は閉じているのに対し、転母では円唇以外の効果を全て打ち消して口を開ける。転母を指定し場合は、不動を意味し、顎と舌は起母と介母を発音した位置から動かない。ゼロ転母も含め、合計3転母しかない。転母は狭めてた口を一転して開ける方法を表す。ゼロ転母の不転(ふてん)小転(しょうてん)大転(だいてん)の計3転母である。

転母は音韻学の韻腹に対応する。また、e、a はの順に等韻図の内転と外転とも対応する

*5*6

|*転母の音価|<|< |< |h | | |l=: | |nw:c |* |*音韻特徴|*音価 |*音声特徴 | |*- |*不転 |$$j$$$$4$$$$w$$$$z$$$$\Z$$$$\:R$$$$V$$|l:起母と介母の音を保つ | |*e |*小転 |$$e$$$$\oe$$$$o$$$$@$$$$7$$$$E$$ |l:顎を小さく開ける |t.: |*a |*大転 |$$E$$$$a$$$$A$$ |l:顎を大きく開ける |

|*転母表|< |h |*不転 | -|t=: |*小転 | e| |*大転 | a| |*転母の音価|<|< |< |h | | |l=: | |nw:c |* |*音韻特徴|*音価 |*音声特徴 |t=: |*- | 不転 |$$j$$$$4$$$$w$$$$\*r$$$$\:R$$$$V$$|l:起母と介母の音を保つ| |*e | 小転 |$$e$$$$\oe$$$$o$$$$@$$$$7$$$$E$$ |l:顎を小さく開ける |t.: |*a | 大転 |$$E$$$$a$$$$A$$ |l:顎を大きく開ける |
零転母の不転は起母と承母のまま音を伸ばす。小転e は顎を僅かに開ける。ただし、低舌の場合は顎を閉じたままでも許容される。大転ae と弁別できる程度に顎を開ける。何れも転母も前後の承母と結母の影響を受けて変わるため、多くの音価を持つ。不転は、ゼロ転母である。口を開けず、起母と承母をそのまま伸ばした音を表す。伸ばす過程では、力を少し緩めるため、音価は前の起母や転母に対応した接近音となる。ただ、中国語では摩擦音と接近音の対立が無いため、摩擦音で発音される場合もある。
転母に相当する母音を3種類に分類することは主流ではあるが、音価が多いため、また不転と小転の間で揺らぎがあるため、音価の分類に関しては専門家の間でも統一しないのが現状である。これに関して、凌宮音韻では揺らぎがある場合は両方とも可とし、規則的な音価を本則、非規則的な音価を許容と見なす。例えば、不転の音価の内、通常は母音として扱われる$$i$$$$u$$なども凌宮音韻では一律子音とした。これに関しては具体的に転母理論として纏める予定。小転 e は大転と弁別できる程度に顎を小さく開ける音である。低舌の場合は顎を閉じたままでも許容される。また、前後の音に応じて不転と区別しない場合もある。
大転 a は小転と弁別できる程度に顎を大きく開ける音である。顎の開き具合は絶対なものではなく、個人差・地域差が大きい。飽くまでも弁別できる程度の相対的なものである。
転母は前後の音素に影響される性質上、多くの音価を持つ。その上、音節によっては小転の$$7$$が落ちて不転になったり、同じ音価$$E$$が小転と大転の両方に現れたりと、分類が難しい。このため、転母の分類に関しては専門家の間でも統一しないのが現状である。音節構造と合わせて様々な分類法が提案されているが、凌宮音韻は規則性を強めた分類法に属する*7
*5 同じ「転」と呼んでいるのは偶然かもしれない。
*6 同じ「転」と呼んでいるのは偶然かどうかは調べてない。
*7 音節構造から転母独特の解釈まで転母理論として纏める予定。

結母

結母(けつぼ)

結母は、音節の終了方法を指定する。結母は単独では音節を作らず、結母に入るときに弱い音の移り変わりが発生する。i、u、n、ng は音韻学の韻尾に対応するが、将来的に er 音化を指定する結母を追加する予定。結母は、音節の終わり方を表す。6結母である。

|*結母表|< |< |h | |*前方|*後方|t=: |*口音 | i | u | |*鼻音 | n | ng |

歴史的音韻変化で消えた両唇鼻音の m や破裂音 p、d、k も存在していれば結母に入る。また、児音化も5結母と組み合わせた音として結母に分類されることになる。しかし、児音化の規則は複雑で、新しく、現在も進化途中であるため、理論が纏まるまで結母に加えないことにした。
一方で、児音と関係なく、ピンインでは「er」と表記される特殊な巻舌母音が存在する。将来結母に分類予定の児音化で「i」や「n」と排他的であることから、暫定で前方の鼻音として分類する。

|*結母の音価|<|< |< |< |< |l:h | | | |l=: | | |nw:c |* |*音韻特徴|< |*音価 |*音声特徴|< |t=: |^ |*鼻音 |*前後|^ |*鼻腔開放|*閉鎖 | |*i | 口音 | 前方|$$I$$| | 硬口蓋接近 | |*u |^ | 後方|$$U$$|^ | 軟口蓋接近+円唇|t.: |*n | 鼻音 | 前方|$$n$$| 鼻腔開放| 歯茎閉鎖 | |*ng|^ | 後方|$$N$$|^ | 軟口蓋閉鎖 |t.:

また、「u」は唇を使うために「前方」よりも前方ではあるが、二重調音で、同時に後舌と軟口蓋でも接近する準後舌母音である。既に消滅した「m」と「p」は「u」と共に唇を使う結母であったら、今は「u」しか残ってないため、唇の行は省略する。
|*結母表|< |< |< |h |* |*口音|*鼻音|*児音|t=: |*開放 | - | | | |*前方 | i | n | r | |*後方 | u | ng | | |*結母の音価|<|< |< |< |< |h | | | |l=: | | |nw:c |* |*音韻特徴|<|*音価 |*音声特徴|< |t=: |^ |*前後|*鼻音|^ |*鼻腔開放|*閉鎖 | |*- | 開放| 口音| |転母までの音を維持|< | |*i | 前方| 口音|$$I$$| | 硬口蓋接近 | |*n | ^ | 鼻音|$$n$$| 鼻腔開放| 歯茎閉鎖 |t.: |*r | ^ | 児音|$$\:R$$| | 硬口蓋接近・巻舌 |t.: |*u | 後方| 口音|$$U$$| | 軟口蓋接近と円唇化 | |*ng | ^ | 鼻音|$$N$$| 鼻腔開放| 軟口蓋閉鎖 |t.:

声調

声調は、音の高さを指定する。声調は、音の高さを表す。5声調である。
一番低い音を1、一番高い音を5とする5度式で説明される場合が多く、その場合の調値は 55、35、214、51 で表現される。絶対の高さは地域差、個人差が大きいが、
意味の弁別に用いられる声調が4つあることが変わらない。意味の弁別に用いられる声調が5つあることが変わらない。
ただし、例外として、軽声は固有の調値ではなく、直前の声調に応じて変化する。また、文脈アクセントを兼ねているとも解釈できる。これに関しては、別に纏める予定。軽声は固有の調値ではなく、直前の声調に応じて変化する。また、文脈アクセントを兼ねているため、規則が複雑である。軽声に関しては、別に纏める予定。

|*声調の音価|<|< |< |< |l:h | |l.: | |l=: | |nw:c |* |< |*音韻特徴 |*発音 |*音声特徴|t=: |*1|*陰平|高→高、高い|$$\tone{555}$$|5-5 | |*2|*陽平|低→高、上り|$$\tone{345}$$|3-5 |t.: |*3|*上声|低→低、低い|$$\tone{214}$$|214 |t.: |*4|*去声|高→低、下り|$$\tone{531}$$|5-1 |t.: |*5|*軽声|短調 | | | |*声調の音価|<|< |< |< |l:h | |l.: | |l=: | |nw:c |* |< |*音韻特徴 |*発音 |*音声特徴 |t=: |*1|*陰平|高→高、高い|$$\tone{555}$$ |5-5 | |*2|*陽平|低→高、上り|$$\tone{345}$$ |3-5 |t.: |*3|*上声|低→低、低い|$$\tone{214}$$ |214 |t.: |*4|*去声|高→低、下り|$$\tone{531}$$ |5-1 |t.: |*5|*軽声|短調 |(軽声は纏まり次第、追加する予定)|<|

まとめ・つなぎ

音節表

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